師せる孔明先生、幾度も私を走らす(9)〜電光石火の一目惚れ〜

変人レベルへの覚醒

三国志の世界へ行ったきり、益々還らぬ人となった私は、
修学旅行先が中国という動機だけで選んだ、
生まれ故郷の秋田にある高校を受験し、無事に入学。

修学旅行のためだけに高校を受験した私はそれまで
家族や親戚の間でも目立たない存在だったが、
ここへ来て私の三国志愛が
変人レベルに向かっているのではと危惧し始めたようだった。

それでも修学旅行で中国へ行けば三国志愛も落ち着き、
その後は普通に世間体に沿った道を歩くだろうと
踏んでいたようだったが、

現実はそんなに無難ではない。

感受性の豊かな十代の行動は、
人生に重大な刺激と転機を与えるが、
私にとってはこの修学旅行がまさに、
人生を変えるものだった。

電光石火の一目惚れ相手は

秋田から天津まで。
船に揺られて片道2泊3日。

よろめきながら憧れの大陸へ上陸したが
僅か30分以内に私は電光石火の一目惚れを果たしたのだ。

相手は中国大陸の地平線。

こんなにも広大な大地を相手に、
さまざまな策略を立て、
所狭しと駆け巡った三国志の英雄達を思い浮かべるだけで、

私は生きていると実感した。

それまで、あるのかないのかさえ興味のなかった鼓動が、
私が生きていることを証明するように熱く脈打ったのだ。

魂にドカンと来る衝撃を受け、
不老不死の情熱を手に入れた瞬間

「私、この国で生活する!」

誰に相談するわけでもなく、
中国で生活をする自分自身を地平線越しに決めた。

期日やいつまでに実現するといった目標ではなく、
確信的な予定として心に刻んだ。

ここまで激しい一目惚れは対象が人であれ、
国であれ、何であれ、
私の人生で後にも先にも、この時だけであった。