師せる孔明先生、幾度も私を走らす(7)〜嗚呼、諸行無情の響あり〜

勿以悪小而為之,勿以善小而不為

意味は、どんなに小さな事でも、悪いことをしてはいけない。
どんなに小さな事でも、善いことを蔑ろにしてはいけない。

校長が一人ひとりの座右の銘を色紙に毛筆で書いてくれる特典付きだったが、
校長は私の座右の銘と、その説明を見るなり

「三国志を勉強しているんですか?」

顔色を変えた。

「勉強というよりも、好きなだけです」

勉強だったら三日と続かない。

「私は名前を覚えるだけで一苦労です」

当時、校長の言葉はよく分からなかったが、年を重ねると分からないでもない。

人の名前はよほど興味が沸かない限り、次の瞬間には読み方さえ忘れてしまうのだから。

「いやぁ、素晴らしい」

二十四時間、オンもオフもなく三国志の英雄達と生きている私にとっては、
極々普通のことだったが、校長は大いに驚いていた。

だが、次に驚かされたのは私の方だった。

その翌週の全校朝会で事件は起きた。

嗚呼、諸行”無情”の響あり!!

「皆さんに座右の銘を書いてもらいましたが、私が心から感動し、学ばされた言葉があります」

校長はそう言いながら、琴線に響いた生徒の座右の銘をデカデカと書いて、
全校生徒の前で発表したのだがー

ななな!!なんと言うことを!

校長は私の座右の銘だけではなく、
私の名前やクラス、
さらには三国志が好きだという個人情報まで
全校生徒の前で暴露したではないか。

目立たないよう、目立たないようにと息を殺すように生活をし、
何とか卒業まで一年を切っていた私に、諸行無情の響きあり。

なんで座右の銘をあんなに素晴らしい言葉にしてしまったんだろう。

もっとどこにでもあるような無難なものにすれば良かった。

或いは事前に、全校生徒の前で私と英雄達の熱愛を公表しても良いかどうか、
打診して欲しかった。
そしたら、絶対に全力で断っていたのに!

校長の突然の仕打ちに、体中の力が抜けた私は、
平然を装って教室まで戻るのがやっとだった。

「かっこつけて生意気だ」「何目立ってんだ」と言われるであろうことを想定し、
何か遭ったら校長に責任をとってもらわないと、と思いながら、
またイジメられるかもと思いながら、
魂が半分抜けた状態のまま教室へ戻ると

そこで待っていたのは
意外なクラスメートの反応だった。

彼らは一体、どんな反応を??

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