師せる孔明先生、幾度も私を走らす(6)〜人生への逆襲の始まり〜

人生への逆襲

球上には日本以外にも中国という国がある。

他の国もある。

今の環境が正解で死ぬまで永遠に続くわけじゃないんだと知ったら、
生活の上辺だけを取り繕ってでも、
誤魔化してでも、
何でもいいから生きようと思えた。

翌年にはクラス替えがあるから、
まずはこの一年を生き抜こう、と。

そう決断したら、少しずつ状況が変わった。

私の命を十三年で終わらせようと仕組んだ
人生への逆襲がジワジワと始まった。

生き地獄の一年目が終わる頃、父の仕事の都合で転校が決まった。
それまでも何度か転校をしており、
その都度、仲の良かった友達と別れることを悲しんだが、
この時は違った。

「勝った!」と確信した。

イジメに勝った。死に勝った。人生に勝った。

サバイバルゲームで最後まで生き残ったような、
意地悪な神様の支配から解放されたような、そんな気がした。

面白いことに、担任教師やクラスメートに転校すると勝利宣言をすると、
彼らの態度はドラマの最終回のように豹変したのである。

少しは責任や良心の呵責を感じたのだろうか。

一切のイジメや嫌がらせはピタッとなくなり、
気持ち悪いほどの作り笑顔で、
偽善的な優しさを押し付けながら私を送り出したのだ。

何とか窮地を脱した私が転校したのは田舎町だった。
田舎町に転校生。
これほど無駄に人目を引くイベントもないだろう。

一難去ってまた一難。

やっと平和な学生生活を送れるかと思いきや、
転校生という無条件に目立つ立ち位置を与えられた私は、
何をしても好奇の目にさらされた。

イジメこそなかったが、一々面倒なくらい注目され、からかわれる毎日。

忍法隠れ身の術を取得したいと、願わない日はなかった。

それでも、三国志への情熱だけは隠そうと思うことはなかった。

友達が好きなアイドルの写真を切り抜いてファイルを作っていた頃、
私は三国志跡紀行が特集された雑誌を買っては、
お気に入りの写真を切り抜いてその情景を瞼に焼き付け、
授業そっちのけで、中国を旅している自分を想像しては、

悦に浸った( ̄▽ ̄)

特に、人生の師・諸葛孔明先生が永眠する武侯墓の写真には、
何度も何度も心を熱くしながら頓首したものである。

そんな生活を送っていたので、
私の本棚と心には三国志以外、立ち入る場所はなかった。

夏休みの宿題の定番である読書感想文は
「出師表」を読んだ感想、というよりも
英雄達へのラブレターのような手紙を書いて提出。

またある時は、校長が全校生徒に座右の銘を書かせたが、
この時は三国志、蜀漢王朝の初代皇帝である玄徳公の遺言を書いた。

勿以悪小而為之,勿以善小而不為

まさかこの素晴らしい座右の銘が
全校生徒を巻き込んだ大事になろうとは
夢にも思わず、、、。

玄徳公の遺言が引き起こした驚きの出来事とは?

次回へ続きます>>>